それは忘れもしない、2005年の8月3日のことです。
アップルのCEOである故スティーブ・ジョブズ氏が、音楽配信サービス「iTunes」の日本参入を告げに来日し、翌四日からの国内配信に先立って記者発表が行われたニュースに、僕は釘付けになりました。
ネット上の音楽配信事業を夢見て、起業してから五年目のことでした。
どうやったらその音楽配信の仕組みが作れるのかをずっと考えていた僕ですが、エンジニアではないし、大学では経営学を専攻したとはいえ、数字は読めても文系、しかもヘヴィメタロッカーですからね。考えることは、音楽配信事業にはいくらかかり、どれだけの開発期間を要するかのシミュレーションです。いろんな人にも相談し、専門的な意見も訊きましたが、優秀なエンジニアを雇って開発してもらうとしても三年はかかって、費用も少なく見積もっても三億円はかかるという試算が出たりして、「ああ、そんなのできないや」と溜息ばかりついていました。
しかしある日、音楽業界では有名なプロデューサーYさんの助言で、僕の考えはがらっと変わったのです。
「殿木くん、熱意はわかるけど、音楽配信の仕組みを一から作ろうなんて無理だ。君はネット上で楽曲を宣伝するスペシャリストに徹した方がいいよ」
僕ははっとしました。僕はT社時代からずっと楽曲の宣伝屋だった。ミュージシャンの気持ちに寄り添うことができる宣伝屋。この強みを活かさなくてどうする!
Yさんの一言で、それまで僕ががんじがらめになっていた足かせのようなものが、するりと抜けた気分になりました。自分がもたもたやっている間に、誰かが優れた仕組みを構築するだろう。だったらそれに乗っかってビジネスをすればいいのでは、と思えるようになったのです。
そんな矢先です。iTunesの日本上陸を知ったのは!
もう、僕はこれしかないと思いました。iTunesは僕のために日本にやって来た! そのシステムに乗っかって、僕は前に進もう!
結論から言うと、全くツテなどなかったiTunesと契約することに成功し、夢だった音楽配信ビジネスに関わる第一歩を踏み出すことができたのです。それはiTunesが日本に上陸して、わずか、一ヵ月ぐらいの間の出来事でした。
どうすれば、実績もない会社が大手と契約できるのか?
詳しくは 『崖っぷち社長が教える! ピンチを乗り切る「なぜ?」「どうする?」の使い方』 の75~82ページをご覧ください。
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