僕が最初の起業時に輝かしく掲げた音楽業界のIT化を標榜した事業計画は画餅であって、会社設立間もない頃に実際にやっていたのは、ニッチな(隙間をうめる)日銭を稼ぐ仕事でした。創業当時雇ったスタッフは四人の若者でしたが、本当に一生懸命働いてくれました。
もっとも僕を代表取締役社長に担いだX氏、Y氏、Z氏の〝神輿担ぎ隊トリオ〟の皆さんも、新しい会社に大きな夢を持っていました。それは、一言でいうと〝マネーゲーム〟です。
とにかく大口の出資者を募って、未来の明るい事業計画を推し進め、「三年ぐらいで上場させて、皆で大金持ちになろう!」っていう夢を描いていたのですから—。
「ええ、何言ってるの? のっけから、大企業から一億円の大金を引っ張ってこようとしても、けんもほろろに秒殺されたんじゃない?」って、思いますよね。はい、どこに話を持って行っても、できたての会社に出資してくれる奇特な方など見つからず、結局、僕が親父の土地を担保に借金して運転資金をかき集めた状態だったわけですが。
しかし、百戦錬磨の経営コンサルタントのZ氏にすれば、「起業なんて、最初はどこもそんなもの。ここからが勝負だ! 殿木、しっかり企画書を書けよ!」と、僕の肩をバシバシと叩き、全く当たり前かのように平然としているのです。
そう言われて僕は、一生懸命企画書を練りました。僕は、業界でどこよりも早くネットにおける音楽配信サービスを実現したく、その仕組みをどうやって具現化するべきか、そのロードマップを描き、予算書を作成するために脳みそが沸騰しそうになるまで考えていました。でもZ氏は、僕が睡眠時間を削って書いた膨大な企画書にダメ出ししたのです。
「こんな具体的なことはまだいいんだよ。それより出資者がお金を出したくなるような魅力的なことがないとなあ」
と、言われて、最初、僕は、それはどういうことなのか、ピンときませんでした。ぽかんとしている僕にZ氏は、「だからさあ、出資してくれた人の会社のCMに、ビッグネームのミュージシャンが使えますよとか、そういうことだよ。そのために、役員にXさんやYさんがいるんじゃないの?」と。
単純な僕は、なるほどねえと思いました。誰もが知っているビッグスターを自社のPRに使えるというのはおいしい話。もし僕にお金があって「〇〇さんを御社のイメージタレントとして専属契約できますよ」なんて言われたら、とりわけ〇〇さんの大ファンだったら、即決で出資しちゃうかも! と思ったのです。
僕はZ氏に連れて行かれて、X氏、Y氏に初めて紹介されたときの会話を思い出しました。X氏は有名人が所属している事務所の連絡先が掲載されている業界手帳を僕にちらつかせながら「ここに載ってる誰とでも繋げるよ」と言っていたのを! そこで僕はX氏に「〇〇さんの事務所の社長さんを紹介してください」とお願いしました。
ところが、X氏は渋い顔をして「そういう話はちゃんと、出資の話が決まってからにしてくれ。どこからもお金が集まらないうちに、ビッグネームの名前を利用するのはだめだ。もちろん、出資が決まったらちゃんと繋ぐから」の一点張り。
言われてみたら、X氏の言うことは至極当たり前のこと。でも、それじゃあ、話が進まない! Z氏からは「誰の事務所でOK出てるか?」とせっつかれるし、出資のお願いに行く企業や個人投資家とのアポはどんどん決まっていくし、一体どうすればいいのか?
にわとりが先かたまごが先か?
僕は板ばさみになって、悩みました。
なぜ、にわとりが先かたまごが先かで、いっこうに進まないのか?
どうすれば、にわとりたまごのループから脱却できるのか?
その答えは、 『崖っぷち社長が教える! ピンチを乗り切る「なぜ?」「どうする?」の使い方』 の69~72ページをご覧ください。
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