どうすれば、若者がのびのびできる環境が作れるのか?

起業失敗談

こんにちは。「崖っぷち社長」こと殿木達郎です。
今日は会社の宝である「人財」の話です。
社長にとって人材は人財。特に僕のような「崖っぷち社長」は良き人財に支えてもらわないと、すぐ崖から落ちてしまいます。
そんな大切な人財について、後悔してしまったエピソードを書籍から抜粋しました。

「イータレントバンク」の第二期は、僕が代表取締役社長で、役員には僕の片腕とも呼べるA君とBさんが脇を固めてくれていました。創業時は、僕を社長に担いだ〝神輿トリオ〟のX氏、Y氏、Z氏が連れてきた役員がほとんどを占めたのですが、中で唯一、創業時から僕が連れてきた役員がA君でした。

旧知の仲で気心が知れ、熱血漢溢れるA君の性格に僕は魅力を感じていました。新しいことに邁進していくベンチャー企業には、熱量が必要です。なので、A君は頼もしい相棒でした。起業することになったとき、手伝ってもらえないかと相談したら、よく当たる占いの話を持ち出してきて、「今年は親しい友人とでっかい仕事をするって言われたんだ。これって殿木のことだよね」と、役員になることを快諾してくれたのです。

起業した当初は、僕は経営コンサルのZ氏に言われるがまま、大口の出資者を探して、あちこちにプレゼンに奔走していました。とはいえ、会社を経営していくためは、何か収入になる仕事をやっていかねばなりません。そこで、主にWEB制作などに重点をおいて地道に稼ぐことにしたのですが、その現場はA君に任せていました。

二十代のスタッフにとって、ちょっと年上のA君は良き兄貴分として求心力があって、いい感じのチームワークができていました。それに、若いスタッフから見ると、音楽業界の独特なにおいをぷんぷんさせたX氏、Y氏や、キレッキレの経営コンサルのZ氏はキャラが濃すぎて、ある意味怪しい存在。その三人に踊らされている社長の僕にもなんだかクエスチョンマークがついていたかもしれません。となると、若いスタッフの信望はA君に集まっていきます。

僕はそれで良いと思っていたのですが、やがてA君の熱量が溢れ過ぎて、若いスタッフから慕われるどころか、だんだん恐れられる存在として君臨し始めたことが原因で、結局、スタッフとうまくいかなくなり、A君は会社を去って行くことになるのです。水戸黄門にたとえると、助さん格さんがいて良いバランスが保たれるのですが、A君が去って行ったことは、大きな痛手でした。

なぜ、A君は会社を去ることになったのか?

創業してしばらくの間は、事業のプランも皆無、当然資金もあっという間に底をつき、厳しい状況に追い込まれていました。そのとき、株主の一人からアドバイスをいただいたのです。その株主の方は、マネーゲームではなく、本気で事業を考えてくれた方で、「自分がメインスポンサーになるので、条件として役員全員解雇。株式全放棄。減資。ただし、殿木とA君は経営を引き継げ」と救済を申し出てくれました。実際は、その後に新宿区の創業支援融資が奇跡的に決まり(担当者の相談員がヘヴィメタ好きで全力で応援をしてくれたのです)、スポンサーの話はなくなりましたが、これをきっかけに一度組織を再編成し、お飾り役員にはご退任いただき、僕とA君主導の新体制がスタートしました。

A君の熱量が急激に増え出したのはこの頃からです。A君は正直言ってX氏、Y氏、Z氏があまり好きではなかったようですが、表面上は先輩たちを敬ってくれていました。しかし、人間は目の上のたんこぶがいなくなると、それまで内に秘めていたエネルギーを遠慮なく放出し始めるのか、最初は面倒見のいい兄貴分だったのですが、だんだんエスカレートして、若いスタッフを自分の思いのまま、支配するだけの暴君、要はパワハラ上司と化していったのです。

若い社員はA君の顔色をうかがって、いつもビクビクしていました。ところが、最初、僕はそのことに気がつきませんでした。会社にいるよりも外回りで営業をしたり、資金繰りに奔走していたので、社内の人間関係をじっくり観察することができなかったからです。

僕はA君を昔から知っていたので、「いいヤツ」のイメージしかなかったのですが、さすがの僕でもなんか様子が変だなと気がつくようになりました。それはまず、若いスタッフがすぐ辞めることや、どこか元気がないことに気になって、「何か社内の人間関係に問題があるのでは?」と思ったからです。

あるとき、僕が会社にいるときに、A君が若いスタッフを前にしてかなり厳しい口調で説教をし始めたのを目撃しました。説教の内容は、それなりに理にかなったものでしたので、非は確かに若いスタッフにあるのですが、「そんなに怖い口調で怒らなくてもいいのに……」と、僕は思いました。

僕も、たまには堪忍袋の緒が切れて、怒鳴ったこともありますし、X氏、Y氏、Z氏とは、経営方針を巡って大声で言い合いになったこともあります。でも、それはよほどのことであって、あとから考えるとあまり後味のいいものではありません。

むしろ、僕はアーティスト体質なので、怒鳴られてしまうと僕自身萎縮してしまいます。逆に良い部分が活かされるように、褒めて褒めて褒めちぎって乗せる方が人間は成長すると思っているので、もし、若いスタッフがミスをしたとしても、頭ごなしに怒るのではなく「ミスは誰にでもあるものだけれど、これはマズいので二度とやらないように肝に銘じてね。でも君のいいところはこういう部分だから、そこを活かして、頑張って」と言うようにしてきました。

ところがA君は真逆で、若いスタッフたちを、とにかく力でねじ伏せていたのです。会社を成長させるには、若者が自由に意見を言って、のびのびできる環境が必要だと思う僕の考えと、A君が組織の中で人を束ねる方法に大きな温度差ができ、それが発端で、A君と僕との関係がこじれ始め、結果、A君は会社を去って行くことになったのです。

どうすれば、若者がのびのびできる環境が作れるのか?

その答えは、  『崖っぷち社長が教える! ピンチを乗り切る「なぜ?」「どうする?」の使い方』 の137~141ページをご覧ください。

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